株を触っている人なら、聞いたことがある人も多いと思います。
フジクラ。
古河電工。
キオクシア。
ここ1、2年で、株価の上昇がかなり目立った企業です。
キオクシアなんかは最近大きく下げる場面もありましたが、まあ、きっと大丈夫でしょう。
知らんけど。
僕は、今後の日本株にはまだ底上げがあると思っています。
理由はいくつかありますが、一番大きいのはやはり、
インフレ
だと思います。
日本でも物価が上がる。
現金の価値が薄まる。
その中で、相対的に企業や実物資産の価値が見直される。
そういう流れを見越した海外マネーが、日本株に流れ込んできているように感じます。
ただし、ここで大事なのは、
「インフレだから、何でも上がる」
ではないということです。
フジクラ・古河電工・キオクシアが強いのは、単に日本株だからではありません。
生成AIブームの裏側にある、かなり現実的な需要をつかんでいるからです。
AIと聞くと、ChatGPTや画像生成のようなソフトウェアを思い浮かべがちです。
しかし、その裏側には大量のデータセンターがあり、
大量の電力が必要で、
大量の通信ケーブルが必要で、
大量の半導体メモリが必要です。
つまり、AIブームとは、画面の中だけの話ではありません。
現実世界のインフラを、ものすごい勢いで作り替えている話です。
フジクラは、データセンター向けの光ファイバーケーブルや融着接続機などで強い。
古河電工も、AIデータセンター関連の光ソリューションや情報通信関連が業績を押し上げている。
キオクシアは、NANDフラッシュメモリやSSDという、データを記憶するための中核部品を持っている。
要するに、彼らはAIブームの「上流」にいるわけです。
ここで大事になるのが、
プライシングパワー
です。
プライシングパワーとは、簡単に言えば、
値段を上げても、客が逃げにくい力
です。
インフレ時代に強い企業とは、まさにこの力を持っている企業です。
材料費が上がった。
人件費が上がった。
物流費が上がった。
そのときに、
「では、価格に転嫁します」
と言える会社は強い。
逆に、
「価格は上げられません。でもコストだけは上がります」
という会社は苦しい。
プライシングパワーの強い企業には、いくつか共通点があります。
代替品が少ない。
乗り換えコストが高い。
供給量をある程度コントロールできる。
顧客の意思決定において、価格が最優先ではない。
たとえば、Hermèsは典型です。
欲しい人がいくらでもいる。
供給量は絞れる。
少し高くなったからといって、顧客が一斉に逃げるわけではない。
工業製品でも同じです。
生産ラインの中核に関わる部品や素材は、数百円、数千円をケチって簡単に切り替えるものではありません。
信越化学のウェーハを少し安いものに変えて、生産ラインが止まる。
そんなリスクを取る企業は少ないでしょう。
だから、物流や商流の上流にいる企業は強い。
川下で価格競争に巻き込まれる企業よりも、
川上で「これがないと困る」と言われる企業の方が、インフレ時代には強い。
では、逆にプライシングパワーが弱い業界はどこでしょうか。
身近なところで言えば、
医療業界
です。
特に保険診療の世界では、プライシングパワーはほぼゼロに近い。
診療報酬は、厚生労働省が決める公定価格です。
2年に一度、制度として改定されます。
個々の医療機関が、
「うちは技術が高いので、今日から手術料を20%上げます」
とは言えません。
これは介護や保育にも近い構造です。
制度によって価格の天井が決められている。
一方で、コストは市場価格で上がります。
電気代は上がる。
材料費は上がる。
人件費も上がる。
医療機器も高くなる。
建物の維持費も上がる。
でも、収入側は制度改定を待つしかない。
つまり、
コストはインフレするのに、売上単価は自由に上げられない。
これが、医療業界の苦しさです。
もちろん、医療には公共性があります。
命や健康を扱う以上、自由価格にすればいいという単純な話ではありません。
ただ、働く側から見たときには、この構造を理解しておく必要があります。
自分がどれだけ努力しても、
どれだけ技術を磨いても、
どれだけ真面目に働いても、
その価値が価格に反映されにくい世界で働いている。
これは、かなり厳しい現実です。
インフレの時代に、プライシングパワーのない業界で働く。
その意味を、もう少し真剣に考えた方がいいのかもしれません。
給料が上がらない。
でも物価は上がる。
生活費は上がる。
教育費も上がる。
住宅費も上がる。
その中で、ただ労働収入だけに頼る。
それは、構造的にかなり不利です。
だからこそ、資産形成が必要になる。
別に、全員がフジクラや古河電工やキオクシアを買え、という話ではありません。
そうではなくて、
自分が働いている場所にプライシングパワーがないなら、せめて自分の資本はプライシングパワーのある場所に置いた方がいい
という話です。
労働では価格を決められない。
でも、資本の置き場所は自分で選べる。
ここに、現代の資産形成の本質があると思います。
インフレ時代に、現金だけを握りしめる。
価格転嫁できない業界で働き続ける。
そして、世の中の値段だけが上がっていく。
それは、じわじわと沈んでいく船に乗っているようなものです。
だから、気づいた方がいい。
世の中には、値段を上げられる側と、値段を受け入れるしかない側がある。
そして多くの人は、普段の労働では後者にいる。
医療者は、患者のために価格を上げられない世界で働いている。
だからこそ、自分の人生までデフレ価格で差し出してはいけない。
ならば、せめて資産の一部くらいは、前者の側に置いておきたい。
気づいていますか?
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