リーマンショック時のFRB議長は、ベン・バーナンキでした。
この人が重要なのは、ただの中央銀行総裁ではなかったからです。
バーナンキは、大恐慌の研究者でした。
1929年から始まった大恐慌がなぜあれほど深刻化したのか。
なぜ銀行危機が連鎖し、経済が長期停滞に陥ったのか。
その研究をしてきた人物が、現実の世界金融危機のど真ん中でFRB議長を務めていた。
ここに、歴史の不思議さがあります。
バーナンキの問題意識をかなり単純化すれば、
大恐慌は、市場に任せて膿を出したから起きたのではない。
中央銀行が十分に動かなかったから深刻化した。
ということだったと思います。
実際、FRBの歴史解説でも、大恐慌期のFRBは結果として経済を悪化させる判断を行い、助けになり得た政策を十分に採用しなかったと説明されています。
だからバーナンキは、同じ失敗を繰り返さなかった。
金融システムが崩れそうになったとき、
「市場に任せる」のではなく、
中央銀行が前面に出て支える道を選んだ。
これは、短期的には正しかったのだと思います。
あのとき何もしなければ、世界経済は本当に大恐慌級の崩壊に向かっていた可能性があります。
ヘリコプターからお金を撒くという比喩
バーナンキといえば、よく語られるのが、
ヘリコプターからお金を撒く
という比喩です。
これはもともとミルトン・フリードマンの比喩ですが、バーナンキは2002年のデフレに関する講演で、デフレを防ぐためには中央銀行に十分な手段がある、という趣旨の話をしています。
乱暴に言えば、
必要なら、あらゆる手段を使ってでもお金を供給する。
という発想です。
そしてリーマンショック後、それは本当に実行されました。
もちろん、実際にヘリコプターから紙幣を撒いたわけではありません。
中央銀行が国債や証券を買う。
金融機関に流動性を供給する。
金利を極限まで下げる。
市場に「中央銀行が支える」というメッセージを出す。
そうやって、金融市場の崩壊を食い止めた。
これがQEの本質です。
