今回書いたような現象には、経済学で**「ブラケット・クリープ(bracket creep)」**という言葉があります。
インフレによって物価が上がり、それに合わせて給与も名目上は増えていく。
ところが、税率の区分や各種控除、所得制限などの基準が同じ速度で引き上げられなければ、実際の生活水準はほとんど変わっていないのに、より高い税負担を求められることがあります。
つまり、
「豊かになったから税金が増えた」のではなく、
「お金の価値が下がった結果、数字だけが大きくなり、税負担が増えた」
ということです。
税率そのものを引き上げなくても、インフレが続く中で制度上の金額を固定しておけば、実質的な負担は少しずつ重くなっていく。
これがブラケット・クリープです。
だから、インフレの時代には「給料が何%上がったか」だけを見ていてはいけません。
物価がどれだけ上がったのか。
手取りはどう変わったのか。
そして税や社会保険料の基準は、それに合わせて動いているのか。
そこまで見て初めて、本当に自分が豊かになったのかが分かります。
「年収の壁」の問題も、実はこの大きな流れの中にある一つの例なのだと思います。
