先日、長男が図書館で借りてきた絵本。
『しあわせなふくろう』
この絵本を借りてくるのは、たしか2回目だったと思います。
妻が子どもたちに読み聞かせをしているのを、僕も隣で聞いていました。
子どものための絵本ですが、読み終わったあと、これはむしろ大人にこそ読んでもらいたい本だなぁと感じました。
『しあわせなふくろう』という絵本
この絵本は、オランダの民話をもとにした物語です。
登場するのは、ふくろうの夫婦と、にわとり、孔雀、あひるなどの鳥たち。
ふくろう以外の鳥たちは、毎日、食べ物を求めて騒いだり、奪い合ったり、けんかをしたり。
とにかく忙しなく、落ち着くことがありません。
一方で、2羽のふくろうは、静かに寄り添い、いつも幸せそうに暮らしています。
不思議に思った鳥たちは、ふくろうの夫婦に尋ねます。
どうして、そんなに幸せそうにしているのか。
すると、ふくろうは鳥たちを集めて、自分たちの幸せについて話し始めます。
それは、春夏秋冬、移り変わる自然の営みについてでした。
春には、新しい生命が芽吹く。
夏には、生命が力強く育つ。
秋には、葉が色づき、やがて散っていく。
冬には、静けさが訪れる。
そんな四季の変化を眺め、感じながら暮らしている。
それが、ふくろうたちの幸せでした。
ところが、それを聞いた鳥たちは、なんともつまらない話だと呆れてしまいます。
そして、再び餌を求めて争い、忙しなく動き回り始めます。
ふくろうの夫婦は、そんな鳥たちをよそに、また静かに寄り添い、幸せそうに暮らしていました。
そんな物語です。
「私たちみたいだね」
絵本を読み終えた妻が、一言。
「私たちみたいだね」
そう。
まさに僕も同じことを思っていました。
そして同時に、騒がしく動き回るにわとりや孔雀たちが、まだ幼い長男や次男の姿にも重なりました。
もちろん、我が家の子どもたちも、毎日元気いっぱい。
欲しいものがあれば欲しがり、兄弟で取り合いをして、けんかをする。
あっちに行きたい、こっちに行きたい。
あれが欲しい、これが欲しい。
本当に忙しそうです。
でも、それでいいのだと思います。
子どもたちは、まだまだこれから多くのことを経験し、成長していく存在です。
欲望や好奇心は、成長するための大切な原動力でもあります。
何かを欲しいと思うから、努力する。
何かを知りたいと思うから、挑戦する。
誰かに負けたくないと思うから、頑張れる。
そうした気持ちまで否定する必要はありません。
むしろ、若いうちは、にわとりや孔雀のように、精いっぱい外の世界に関心を向けて生きていけばいいと思っています。
幸せを外に求め続ける人生
ただ、ある程度、人生の時計が進んできたとき。
少しずつ、ふくろうのような価値観も身につけてほしいなぁと思います。
人間は、ついつい幸せを外側に求めてしまいます。
もっとお金が欲しい。
もっといい家に住みたい。
もっと評価されたい。
もっと自由な時間が欲しい。
もちろん、そうした欲望を持つことが悪いわけではありません。
僕自身、これまでの人生で、たくさんのものを求め、努力してきました。
そして今も、決して欲望がなくなったわけではありません。
ただ、幸せを外側に求め続けている限り、いつまでたっても満たされないのかもしれません。
何かを手に入れれば、また次の何かが欲しくなる。
誰かより多く持っていても、さらに多く持っている人を見れば、足りないと感じてしまう。
それでは、いつまでたっても心が休まりません。
一方で、ふくろうたちは、何かを手に入れたから幸せなのではありません。
季節の移り変わりを眺め、自然の営みを感じ、夫婦で寄り添いながら暮らしている。
特別な何かが起こらなくても、幸せなのです。
幸せとは、手に入れるものだけではなく、すでにあるものに気づくことでもある。
そんなことを、この絵本は教えてくれているように思いました。
人間も、自然の一部である
もう一つ、この絵本を読んで考えたことがあります。
それは、人間も自然の一部であるということです。
当たり前の話ですが、僕たちは自然に勝つことはできません。
どれだけ科学が発展しても、自然の営みから完全に切り離されて生きることはできません。
そして、自然には四季があります。
春があれば、夏がある。
秋が来れば、冬も来る。
芽吹く時期もあれば、枯れていく時期もある。
いつも同じ状態ではありません。
それは、人間も同じなのだと思います。
体調のいい日もあれば、悪い日もある。
気持ちが前向きな日もあれば、少し落ち込む日もある。
何をやってもうまくいく時期もあれば、努力しても思うように進まない時期もあります。
けれども、僕たちはついつい、いつも元気で、いつも前向きで、いつも成長し続けなければならないと思ってしまいます。
まるで、人生がずっと夏でなければいけないかのように。
でも、冬があるから春が来る。
秋があるから、夏の力強さにも気づく。
自然の変化をそのまま受け入れるように、自分自身の変化や揺らぎも、もう少し自然に受け入れていいのかもしれません。
自分と世界を対立するものとして捉えるのではなく、世界の中に自分がいると考える。
そんな視点を持つことができれば、自分の思い通りにならないことも、少し違った見方ができるのではないでしょうか。
自然を観察すること。
小さな変化に気づくこと。
そして、その変化を無理に支配しようとせず、受け入れること。
それもまた、幸せに生きるための一つの知恵なのだと思います。
いつか、子どもたちにも
今はまだ、にわとりや孔雀のような我が家の子どもたち。
それでいいと思っています。
たくさんのものを欲しがり、たくさんのことに興味を持ち、時にはけんかもしながら、元気に育ってほしい。
そして、いつか大人になったとき。
自分にとって本当に大切なものは何なのか。
何があれば幸せなのか。
そんなことを考えられる人になってほしいと思います。
世の中には、追い求めることで得られる幸せもあります。
でも、追い求めることをやめて、初めて気づく幸せもあるのだと思います。
その両方を知っていてほしい。
挑戦する気持ちも、足るを知る気持ちも、どちらも大切にしてほしい。
そして、いつか子どもたちが親になり、自分の子どもにこの絵本を読み聞かせるとき。
隣にいる大切な人と顔を見合わせて、
「自分たちも、ふくろうみたいだね」
そんなふうに言い合える人生を送ってくれたら、嬉しいなぁと思います。
おわりに
妻と子どもたちが絵本を読んでいる。
その隣で、僕も一緒に物語を聞いている。
特別な出来事でもなければ、何かを手に入れたわけでもありません。
けれども、考えてみれば、そんな時間こそが、今の僕にとって何よりも幸せな時間なのだと思います。
ふくろうの夫婦のように、静かに寄り添って暮らす。
これからも、そんな日々を大切にしていきたいですね。
