もうひとつ大事なのは、若い医師への影響です。
これから医師になる世代に対して、僕たちはどんな生き方を見せられるのでしょうか。
医学教育は、知識と技術を教えます。
解剖。
生理。
病理。
薬理。
診断。
手術。
救急対応。
患者説明。
もちろん、どれも大事です。
でも、医師として長く健全に生きるための構造設計は、ほとんど教えられません。
どう働くのか。
どう稼ぐのか。
どう休むのか。
どう家庭と両立するのか。
どう燃え尽きないのか。
どう自分の専門性を社会の中で活かすのか。
どうお金と向き合うのか。
こういうことは、誰も体系的には教えてくれません。
その結果、真面目な医師ほど、医療だけに閉じ込められていくことがあります。
患者のため。
病院のため。
医局のため。
地域のため。
後輩のため。
その大義名分の中で、自分の人生の設計が後回しになる。
でも、それで本当に良いのでしょうか。
医師が自分の人生を犠牲にし続けることは、美談ではありません。
それは、構造の歪みを個人の責任感で埋めているだけかもしれません。
これからの若い医師に必要なのは、医学だけではないと思います。
医療制度を理解する力。
経済を読む力。
情報を発信する力。
テクノロジーを使う力。
自分の信用を育てる力。
金融資本を育てる力。
時間の使い方を設計する力。
これらも、これからの医師にとって必要な能力です。
医師が医学以外を学ぶことは、逃げではありません。
それは、自分の人生を医療業界の古い構造に丸ごと預けないための防衛です。
そして、視野を広げた医師ほど、結果的に患者にも誠実に向き合えるのではないかと思います。
医療以外を知ること。
医療以外の収益基盤を持つこと。
医療以外の社会構造を理解すること。
それは、医師としての純度を下げることではありません。
むしろ、医師としての独立性を高めることです。
患者のために、という大義名分は、医学以外に視野を広げたくらいで揺らぐものではありません。
もし揺らぐのだとしたら、それは視野を広げたせいではなく、もともとの軸が弱かっただけです。
これからの時代を医師として生きるなら、医学だけに閉じていてはいけない。
臨床を大事にする。
でも、臨床だけに人生を預けない。
患者に誠実である。
でも、自分の人生を犠牲にしない。
医療の内側を知る。
同時に、医療の外側も知る。
その両方を持った医師こそ、これからの時代に必要なのだと思います。
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