保険の勉強を始めたのは、車両保険の話がきっかけでした。
同じように騙されていることがいっぱいあるのではないか。
疑念と焦燥感は僕を駆り立てました。
調べれば調べるほど、出てくる出てくる。
「実は不要」「実は損」という話が。
そして僕はふと気づいきました。
もしかして、もっと大事なところでも騙されていないか。
その疑念が、ひとつの保険証券に目を向けさせました。
個人年金保険、という名の檻
加入したのは気づく5年前。勧めてくれたのは、何を隠そうと実の母でした。
やってきた保険営業マンに言われるがまま契約してしまいました。
親が勧めるんだから悪いものはない。
当時、営業マンに言われた一言が
「利率1.3%の商品はもうありません。銀行の定期預金が0.001%の時代です。」
たしかに、数字だけ見れば魅力的に映りました。
毎月5万円、33年で総額2000万円の払い込み。それが満期には約2500万円になって返ってくる——そういう話だった。
500万円、得をする。
当時の僕はそう思って、判を押した。
「500万円得」の正体
後になって知った。
まず、その500万円には税金がかかります。
一時所得として課税されるから、手取りはもっと少ない。
でもそれより深刻だったのは、比較対象を間違えていたことです。
僕は「銀行預金と比べて得か」を考えさせられていた。
本当に考えるべきは「この30年間、もし投資に回していたら?」でした。
インデックス投資を知ったのは、加入から5年後のことでした。
全世界株式や米国株のインデックスファンドが、長期では年率5〜7%程度の平均リターンをもたらしてきたという事実。
1.3%と、5%。
この差が30年複利で積み重なったとき、どれほどの開きになるか——計算するのが怖いくらいでした。
母を恨まない理由
誤解しないでほしいのは、母を恨んだり責めたりはしていないです。
ここで母を否定、責めるのは短絡的であり、「変わりゆく仕組み」に目を向けられていない。
母が現役だった時代、個人が投資をするということは、今とはまったく別の話でした。
証券口座を開くだけでも敷居が高く、
情報も少なく、
「株は博打」「投資は怖いもの」
という空気が社会を覆っていた。
デフレの時代、貯金が正義。
貯蓄型保険も利率がすごく高い時代。
そういう時代を生きてきた人間が、子どものために「安全で、銀行より有利な」商品を選ぶ。
それは合理的な判断だったと思う。その時代においては。
問題は、時代が変わったことに気づかなかったことです。
ネット証券が普及し、
NISAができ、
手数料ゼロに近いインデックスファンドが普及し、
スマホひとつで世界中の株式に分散投資できる時代が来た。
それでも「投資は怖い」という固定観念が、アップデートされないまま次の世代に手渡された。
悪いのは、情報格差であり、母ではない。
気づいたとき、5年が経っていた
解約を決めたのは、加入から5年後。
それまでに払い込んだ保険料は、約300万円。
解約返戻金の試算を出してもらったら——270万円。
30万円の損切り。
電話口の担当者は言いました。
「あと10年続けていただければ、払込額との差額は解消されます」
10年。
僕は心の中で笑った。笑うしかなかった。
その10年間、僕はインデックス投資の複利を享受できます。
10年の複利の機会損失はとても大きい。
資産の桁が一つ違うかもしれない。
その機会損失を、あなたは計算に入れてくれているか、と。
「資産運用には他にも方法があると勉強したので解約したいです」
最後にそう言い解約しました。
プロに任せる、の意味
「投資はプロに任せなさい」という言葉があります。
貯蓄型保険を勧めるとき、しばしばこのロジックが使われます。
保険会社のプロが運用するから安心だ、と。
でも実態はこう。
あなたのお金を元手に、保険会社が運用する。
そこで生まれたリターンから、たっぷりと手数料を差し引いたあとで、残りをあなたに返す。
保険会社のプロが、自社のために運用しているのだ。
本当の意味で「プロに任せる」なら、
自分の資産を自分でコントロールしながら、
低コストのインデックスファンドを通じて市場全体に乗っかる方がよほど合理的です。
あなたが直接、手数料の低いファンド(プロ)に任せるべきです。
どうして、中抜き仲介業者(保険会社)に投資をお願いするのか。
「プロではなくて中抜き業者にお願いしている」
その構造に気づかなければなりません。
無知は、やさしい顔をしてやってくる
貯蓄型保険は「悪」だとは思わないが「毒」である。
商品として存在する理由は一部了解可能です。
強制的な積み立て効果、死亡保障との組み合わせ、税制上の優遇措置——それが刺さる人も、いる。
税制上の優遇措置も本当はたいしてないけれども。
ただ、僕が学んだのはこういうこと。
金融の無知は、悪意ある人間よりも、善意ある人間によって広がる。
母は騙そうとしていなかったし、担当の営業マンも、悪人ではなかったかもしれない。
ただみんな、知らなかった。
あるいは、知る機会を持てなかった。
だから僕は息子たちに、できるだけ早く伝えたいと思う。
お金の話を、タブーにしないこと。 保険と投資を、混同しないこと。
「得をする」「数字を扱う」話は、必ず比較対象を疑うこと。
数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う。
30万円の損切りは、授業料だったと思うことにしました。
高い授業料だったけれど——知らないまま30年続けていたよりは、ずっと安かった。
その後、僕はSBIでネット証券を開設しました。
NISAを利用してインデックス投資を始めました。
まだ制度上残っていたジュニアNISAも始めました。
いろいろ考えた上で、日本の高配当株投資も始めました。
そして、授業料よりはるかに多くの利益を出せています。
父が無知だと貧乏になる、そんなネイティブアメリカンの諺が頭をよぎりました。
ああ、まさにこれのことか!
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