直美という選択について 一人の外科医から見た、医療と時代と物差しの話2

医療

直美問題に関する僕なりの考察です。
前回の続きです。

3.ミクロで見たときの「直美」という選択

ここまでマクロな問題点を並べましたが、
個人のレベルで直美を見ると、話は少し違ってきます。

「好きにしたらいい」と思っている自分もいる

進路やキャリア形成は、究極的には本人の人生の問題です。

  • 家庭環境
  • 経済状況
  • 身体的・メンタル的な事情
  • 向き不向き
  • 価値観や人生観

外からは見えない要素が山ほどあります。

だから僕は、どこかでこうも思っています。

キャリアについて言えば、正直「好きにしたらいい」。

止めつける資格もないし、
美化して賛美する気もない。

その選択の結果を引き受けるのは、結局その本人なのだから。

直美を選ぶ勢いと決断への、少しの羨ましさ

そして正直に言うと、
むしろその世界に飛び込んでいける勢いと決断を、どこか羨ましく思う自分もいます。

保険診療というレールから外れて、

  • 収入も
  • 将来の安定も
  • キャリアの「逃げ場」も

ぐっと狭くなる世界に、それでも自分の意思で飛び込む。
僕にはとても選べなかった道です。

  • リスクを承知で賭けに出る決断力
  • 「こっちで生きていく」と腹をくくる覚悟
  • ある種の図太さと、若さゆえの勢い

そういったものを持って直美という道を選ぶ彼らに、
僕はどこかで羨望にも似た感情を抱いています。


4.それでも、一度は保険診療を経験してほしい

マクロでは問題が多い。
ミクロでは「好きにしたらいい」とも思う。
勢いと決断には、少し羨ましさもある。

――それでも、僕には捨てきれない願いがあります。

できれば、保険診療でしか味わえない「人の役に立つ喜び」を、一度は感じてほしい。

保険診療の現場は、派手ではありません。

  • 夜中の救急で、ひたすら点滴・処置・処方と説明を繰り返す
  • 慢性疾患の外来で、同じ話を何十回も積み重ねる
  • リハビリや創処置など、地味なケアをコツコツ続ける

インスタ映えもしないし、売上にも直結しません。
「儲かる医療」とは、だいぶ遠い場所です。

それでも、ときどき胸に残る瞬間があります。

  • 「先生に診てもらえてよかった」と静かに言われたとき
  • 痛みが少し和らいで、患者さんの表情がふっと緩むとき
  • 退院のときに、ご家族が深く頭を下げてくれたとき

そういう瞬間に触れるとき、
保険診療の中には確かに、

お金や数字では測れない種類の「役に立つ喜び」

が存在していると感じます。

直美を選ぶかどうかは、最後は本人の自由です。
ただ、もし迷っている若い医師がいるなら、

「一度は保険診療の現場に身を置いてからでも、直美という選択は遅くない」

と伝えたい気持ちも、どこかで強くあります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました