美容皮膚科を受診して、「肝斑がありますね」と言われたことがある人も多いのではないでしょうか。
肝斑があるということで目当ての治療が受けられなかったり、肝斑が濃くなる可能性を指摘されます。
肝斑っていったい何?どんな治療があるの?
よく理解した上での受診をお勧めします!
肝斑ってなに??
お肌のくすみを気にして受診される方は多いです。
気にされている頬のシミは、老人性色素斑(いわゆるしみ)と肝斑が重なっていますね!
ええ?そうなんですか。肝斑って前のクリニックでは言われなかったような、、、。
原因は不明であるが、、、以下のことで悪化します。
病理学的(顕微鏡で見てみると)な特徴は
- 表皮のメラニン増加
- 真皮の光線性弾力線維編成
※第一三共ヘルスケアさんのHPの画像がわかりやすかったです。
診察してもらう医師により診断が異なる?
以下の理由で、医師によっていうことが違ってきますが、どちらが正しいかは難しいです。ただ、あるかもしれないという前提で治療を計画する方がリスク管理という点では良いのではないでしょうか。
- 定義が明確ではないこと
- 色素性疾患にはグラデーションがあること
- 他のシミも混在していること
そもそも診断が難しいんですね。
治療方法は、、、?
代表的な治療方法は大きく3つ
・トラネキサム酸などの内服治療
・外用療法
・レーザートーニング
どの治療も劇的に効果があるかと言われると、率直に言ってそうでもないです。
基本的には悪化させるような習慣(紫外線とか摩擦とか)を取り除きながら上記3つの治療をできるだけ長期間、上手に組み合わせながら続けることが重要だと思います。
レーザートーニング単独での治療はあまり推奨されていないため、トラネキサム酸の内服や外用療法を上手に続けることが肝となりそうです。
内服治療について
・トラネキサム酸
・ビタミンC
・ポリポディウム ロイコトモス
トラネキサム酸の肝斑治療の起源はなんと日本です。
慢性蕁麻疹の治療に投与した際に偶然肝斑の改善に作用することが発見されました。
作用機序としてはメラノサイトに働きかけて産生・合成を阻害したり、抗炎症作用によるものと考えられています。
日本では咽頭痛などに保険適応があるため、コロナ禍では多くの咽頭痛患者に処方されたため美容医療への供給が滞りました。
ビタミンCは水溶性ビタミンで過剰に摂取すると尿中に排泄されます。
炎症性色素沈着に対しては保険で処方が可能です。
外用療法について
・ハイドロキノン
・アゼライン酸
・ビタミンC、アスコルビン酸
・レチノイド
・トラネキサム酸
・システアミン
<ハイドロキノン>
代表的でよく耳にするのはハイドロキノンです。
有効性は高いが、皮膚刺激症状や細胞毒性があることが知られています。
皮膚刺激症状による色素脱失や色素沈着の合併症も知られています。
<アゼライン酸>
アゼライン酸は、ハイドロキノンよりも副作用のリスクは高くなります。
<レチノイド>
レチノイドはメラニン排出作用で美白効果を示すが皮膚刺激作用が強く、使用感が好きではないという方も多いです。
<システアミン>
システアミンは近年再注目されている外用薬です。
60年前から研究されてきましたが、その強い臭いのため長い間化粧品としての使用は難しいとされてきました。
2012年に開始された研究により、成分の安定化により臭いの軽減に成功し、Scientis SA社(スイス・ジュネーブ)からCyspera(シスペラ、システアミン5%配合クリーム)という商品が誕生しました。
赤くなった、ピリピリしたなどの有害事象が約半数の患者に認められたが95%が1週間以内にその症状の改善を認めています。
70%が改善、60%が満足と回答があり、不満の8%を大きく上回ったと報告されています。(引用:中野あおい:システアミン5%配合クリームの国内臨床経験. 日本美容外科学会誌58巻1号)
<ケミカルピーリング>
ケミカルピーリングはどうなのか??
そもそもケミカルピーリングとは外用剤を塗布して皮膚に変性による剥離と創傷治癒を促して表皮・真皮と言われる皮膚構造の再構築をもたらす方法です。
グリコール酸、サリチル酸、乳酸、トリクロロ酢酸が用いられるが推奨度はC21です。
- 十分な根拠がないので現時点では推奨できない。 ↩︎
トレチノイン・ハイドロキノン療法
肝斑やシミなどの色素性病変に対して有効です。
皮膚のターンオーバーを促進し、メラニンを排出する作用のあるトレチノインとメラニン産生を抑制する作用のあるハイドロキノンを併用することで単剤で使用するよりも高い効果が得られます。
<トレチノイン>
ビタミンA誘導体の1種
・角質剥離
・ケラチノサイト増殖
・表皮ターンオーバー促進
・ムコ多糖類沈着作用
・真皮乳頭層での血管新生、コラーゲン産生促進、皮脂腺機能抑制作用
適応は、老人性色素斑(しみ)、肝斑、そばかす、炎症後色素沈着などの色素性病変以外にも、skin rejuvenation(小皺や皮膚のハリ)の改善、尋常性ざそう(ニキビ)に対して適応があります。
実際の使用方法は大きく2種類
・限局的な色素疾患
・広範囲の色素疾患、小皺やハリ改善の治療 0.05%のトレチノインを4%ハイドロキノン美容液などと混合して顔全体に使用する
<限局的なしみなどに対しての使用>
0.1%や0.4%の濃度のトレチノインをベビー綿棒などを使用してしみの範囲にだけ塗布し、乾いたのちに、ハイドロキノンを使用します。ハイドロキノンは顔全体に塗布しても問題ありません。
<広範囲のしみや、小皺、皮膚のハリに対しての使用>
0.05%などの低濃度のトレチノインをハイドロキノン含有の美容クリームと混合し顔全体に塗布する方法です。
※トレチノイン反応による皮膚炎
トレチノインは外用開始後3日ほどで落屑(皮膚がポロポロ剥ける)、赤み、ヒリヒリ感が出現します。
患者さんのライフスタイルや許容範囲で濃度や外用頻度を調整するのが良いです。
中には全く反応が出ない人もいます。
この皮膚炎の出る辛い時期をうまく乗り越えることが治療のポイントでもあると言えます。
<治療期間は??>
トレチノインは長期使用により耐性が生じると言われています。
2、3ヶ月使用したら1ヶ月ほどの休薬期間を設けましょう。
5ヶ月ほど使用したのちに、トレチノインの生理活性の1/100程度のレチノールに切り替えるという方法もあります。
・皮膚炎症状が辛いときは何日か休んで、無理しないこと
・大切な予定があるときは余裕を見て1週間は中止してください。
侮ることなかれ、遮光の重要性
近年では、肝斑治療において日焼けしないことの重要性が注目されています。
Zubairらは最も大事なことは遮光であるとしています。(引用:Zubairら Dermatol Clin. 2019)
レーザートーニングについて
レーザートーニングはアジアを中心に始まった治療で、日本では2010年から急速に普及した治療です。
簡単に言いますと、低フルエンス(弱い出力)で顔全体にレーザーを当てることです。
本来、高フルエンスで治療をすることを目的に開発された機器でありますから低フルエンスで治療することに意味があるのか?という問いがあります。
高フルエンスで治療する→ダウンタイムのある照射
低フルエンスで治療する→ダウンタイムのあまりない照射
トーニングの合併症は肝斑の増悪と難治性白斑の形成です。
大事なこと、やってはいけないこと
肝斑の背景には慢性的な皮膚の炎症が隠れていることがあるため、十分に炎症とその原因を取り除くことが重要です。
多くの文献で、サンスクリーンと適切なスキンケアの重要性が強調されています。
つまり、やってはいけないことは炎症を起こすような刺激を加えることです。
施術内容によっては避けた方が良いものもあります。
具体的には。
・フラクショナルレーザー
・ダーマペン
・光治療(フォト)
などですが、実際には1度の治療で悪化することは少ないと思います。
繰り返し、慢性的にこれらの治療を行い肝斑に刺激を与えることは絶対に避けた方が良いと言えると思います。
当日の肌の状態では、肝斑が濃くなる可能性を理解いただいた上で、治療をすることもありますので受診したクリニックで相談ください。
美容治療は決して贅沢ではないと思います。
どうせ歳を取ったら気にしなくなるんだし、と思う人もいるでしょう。
ただ、今を気持ちよく過ごしたいという目的のある人にとっては重要な手段のひとつなのです。
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