世の中の多くの会話や説明には「立場」があります。人にはそれぞれの背景や事情があり、ときには「利益相反」とも言える場面で話をしていることもあります。
これは「人を疑え」という話ではありません。
大切なのは、相手の言葉を鵜呑みにするのではなく、自分の頭で考える姿勢です。
■ ポジショントークとは?

「ポジショントーク」とは、自分に有利な立場からの発言のこと。
たとえば金融の世界では、ある投資家が自分の持っている銘柄を有利にするために、その銘柄に都合の良い情報ばかりを発信することがあります(Wikipediaより)。
これはビジネスの世界だけではありません。医療の現場でも、日常生活でも、あらゆるところに存在します。
■ 医療の現場におけるポジショントークの実例

私は医療者として働いていますが、医学生の頃は「医学」については多く学んだ一方で、「医療とお金」の関係について学ぶ機会はほとんどありませんでした。
ある日、上司が病院長からこんな言葉を受けているのを聞きました。
「君たちの診療科はもっと売上を上げなさい!」
この一言が、「医療」と「経済」が密接につながっていることに気づかされた瞬間でした。
病院が売上を上げるには、大きく2つの方法があります。
◎ 良い改善方法:真面目に頑張る
- 多くの患者さんを診る
- 地域との連携を強化して紹介を増やす
- 救急外来の受け入れ体制を整える
これは理想的な形ですが、現場の医師や看護師への負担は大きく、採算が合わなくなることもあります。体制が整っていなければ、現場が疲弊して「医療崩壊」に繋がるリスクも。
◎ 悪い改善方法:単価を上げる
- 必要以上の検査
- 不要な投薬や手術
たとえば「念のためのCTやMRI検査」はその代表格です。実際、日本は人口あたりのCT・MRIの台数が世界一(厚生労働省データより)。
検査を受けやすい環境は良い面もありますが、「それは本当に必要な検査か?」と疑問に感じる場面もあります。
■ 医療費の削減には、患者側の知識も重要

繰り返しますが、医師を疑えという話ではありません。
大切なのは、「その検査や治療が本当に必要なのか?」という視点を持ち、納得いくまで説明を受けることです。
患者側にその姿勢があれば、医師も誠意をもって対応してくれるはず。
医療費の適正化や、医療従事者の過労軽減にもつながります。
■ 教育の現場でも考えたいこと

「医療と健康」は本来、とても身近で大切なテーマのはずなのに、義務教育の中でほとんど扱われていません。
- 保険制度
- 検査や治療の意味
- 医療リテラシー(医師とのコミュニケーションも含む)
これらは一人ひとりが人生を健やかに過ごすために、早いうちから学んでおくべき知識だと感じます。
■ 日常生活にも潜むポジショントーク

話を戻しましょう。
医療の話は一例にすぎません。日常生活でも、私たちは常に何かしらの「契約」や「選択」をしています。たとえば:
- 保険商品の加入
- 投資商品の購入(投資信託、不動産など)
- 車や家の購入
- スマホの契約
こうした場面でも、担当者は自分にとって都合の良い情報を中心に話すものです。
相手の言葉の背景にある「立場」に気づけるかどうか
それが、無駄な出費や後悔を減らすカギになります。
■ 知らないと損をする時代

ネイティブアメリカンにこんな言葉があります。
「父が無知だと貧乏になり、母が無知だと病気になる」
この言葉が示すのは、「知識のなさ」は人生において致命的な不利益をもたらすという事実です。
必要な知識を持たないまま不要な契約をすれば、お金も時間も奪われます。
それが、知らず知らずのうちに「固定費の奴隷」になる原因です。
■ まとめ:誰を信じるかではなく、どう考えるか

誰かの意見を信じるかどうかを決める前に、
その人の立場や背景を想像してみてください。
本質が見えてくるかもしれません。
疑うのではなく、自分で考える力(=リテラシー)を持つことが大切です。
- 知識がなければ、騙されやすい
- 知識がなければ、必要以上に疑い、チャンスを逃す
だからこそ、自分で調べ、学び、考える習慣が重要です。
こころ穏やかに、納得感のある人生を歩むために。
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