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【医師が本音で語る】保険診療と自費診療の真実|制度の闇と未来の医療

生き方とマインドセット

美容医療や再生医療といった“自費診療”が注目される一方で、「保険診療こそ正義」といった見方が未だ根強く残っています。
しかし、医師として現場に立ち続ける中で見えてくるのは、どちらの医療にも「歪み」が存在しているという現実です。
本記事では、保険制度の矛盾、自費診療の可能性と課題について、現役医師としての視点から、忖度なしで考察していきます。


保険診療は本当に“正義”なのか?

一般的に、保険診療は「誰もが平等に医療を受けられる仕組み」として評価され、自費診療は「富裕層向けの特権的な医療」としてネガティブに捉えられることが多いように感じます。しかし、実際のところ、保険診療も制度の背景には公的資金の流れや、製薬・医療機器業界との癒着などが複雑に絡んでいるのが現実です。

たとえば、「保険適用される治療と、そうでない治療の基準は本当に公平なのか?」という疑問は常に存在します。新しい治療法がしっかりとエビデンスを揃えていても、既存の利権にそぐわないものであれば、保険適用が認められにくいケースも見受けられます。

また、診療報酬制度の影響により、医師の行動が歪められてしまう場面もあります。

  • 「◯分以上の診察で加算」 → 形式的な診察時間の延長につながる
  • 「検査や処置ごとに点数が決まる」 → 不必要な検査の増加を招く
  • 「病名を付けることで診療報酬が上がる」 → 軽症でも病名をつけざるを得なくなる

このように、本来「患者の健康を守る」ことが目的であるはずの保険診療が、制度によって目的から逸れてしまう構造的な問題を抱えています。「保険診療は常に正しい」と言えるほど純粋な仕組みではないと思っています。


自費診療のエビデンス問題と市場原理

自費診療においてしばしば問題視されるのが、「エビデンス(科学的根拠)の不十分さ」です。しかし、そもそも保険診療のエビデンスに関しても、その信頼性に疑問が残るケースがあるのが医療の現場です。

エビデンスは「どれだけのデータが蓄積されたか」によって成り立ちますが、製薬会社や関連団体の意向によって、都合の良いデータが採用されることもあり得ます。その代表的な例として、前回の記事で触れた降圧薬「ディオバン」にまつわる問題が挙げられます。

一方で、自費診療のエビデンスが乏しい背景には、「そもそも研究資金が十分に流れていない」という構造的な理由があります。すなわち「エビデンスがない」=「効果がない」とは限らず、「検証する環境が整っていないだけ」というケースも多く存在します。

幹細胞治療や再生医療の分野などは、まさにこのジレンマの中にあると思います。保険制度の対象外であるため、公的資金の影響は受けにくい一方、コストが莫大なため一部の富裕層にしか届かない状況です。ある意味では、古代中国の皇帝が受けていた医療のような側面もあるかもしれません。

しかし、市場原理の観点から見れば、このような治療は「適正価格」であるとも捉えられます。

  • 高額でも価値が認められれば、治療は継続される
  • 効果が不明確であれば、自然と淘汰されていく

美容医療においても、広告やインフルエンサーの影響は大きいですが、本当に価値のある治療は残り、そうでないものは市場から消えていく傾向があります。

この**「市場原理による透明性」**という点では、保険診療よりもむしろ健全性が高いのではないか、というのは興味深い視点だと感じています。


保険診療と自費診療、どちらが「健全」なのか?

このテーマに対する結論としては、「どちらが善でどちらが悪か」という二元論ではなく、それぞれの制度が持つ問題点を理解したうえで、患者にとって最適な選択ができる環境を整えていくことが最も大切だと考えています。

  • 保険診療:公平な医療アクセスを提供するが、既得権益や制度の歪みが存在する
  • 自費診療:金銭的なハードルは高いが、市場原理により透明性が保たれやすい

このバランスをどう取るかが、今後の医療制度を考えるうえでの大きな課題だと考えています。

そして、医療現場で働きながらも、俯瞰的にこのような構造を見つめられる視点を持つ医師が、これからの時代においてますます求められていくのではないかと感じています。

そのような視点を持つ自分が、今後医療の現場でどのような関わり方をしていくべきか。現在、深く悩みながらも模索しているところです。同じように悩みを抱えている医師の方々も、きっと少なくないのではないかと思います。

 

 

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