株式市場の下落がニュースで取り上げられるたびに、不安をあおる広告や記事が急増します。
「今こそ“安全”な資産に逃げるべきです」「変動の激しい株より、保険で守るべき資産を」——そんな見出しを見たことはありませんか?

実際に、過去の市場急落後には、「〇〇ショックで資産が激減した人は、今すぐ保険で守りを固めよう」といった論調の記事や広告が散見されました。
しかし、その背後には“利益相反”の構造が潜んでいることに、どれだけの人が気づいているでしょうか。
■ 投資型保険は誰のための商品か

変額保険や外貨建て保険といった「保険と投資の融合商品」は、複雑な仕組みと高額な手数料が特徴です。
これらは一見、「保障」と「資産形成」の両方を手にできるお得な商品に見えるかもしれません。
しかし本来、保険は「リスクに備えるための仕組み」、投資は「資産を育てる手段」です。
それぞれの目的やリスクが異なるにもかかわらず、これらを無理に一体化することで、利用者にとって分かりづらく、費用対効果の見えにくい商品となっています。
■ 数字の見せ方で印象は変えられる

保険商品は非常に緻密に設計されています。
その設計には、将来の死亡率、解約率、運用利回りなどあらゆるデータが使われており、「保険会社が利益を出すこと」が前提です。
つまり、支払う保険料に対して得られるリターンは、統計的に見ても「保険会社にとって都合の良い設計」になっているということです。
以前、保険会社で統計処理をしていた方が、そのビジネスの仕組みに疑問を感じ、別の道を選んだという話も聞いたことがあります。
仕組みを知れば知るほど、「これは利用者のためのものなのか?」という疑問が湧いてくるのです。
■ ファイナンシャルプランナー(FP)の意見は中立か?

この記事を読んで「でも、FPが勧めていたよ」と思う方もいるでしょう。
もちろん、信頼できるFPもたくさんいます。ただし、「保険商品を販売することで手数料を得ているFP」も一定数存在するという現実があります。
つまり、その助言は本当に中立でしょうか?あなたの人生の最適解でしょうか?
医師として、我々は常に「利益相反」を意識しながら診療をしています。製薬会社からお金をもらって特定の薬を勧めている医者を、あなたは信頼できるでしょうか?
それと同じことが、保険や投資の世界でも起きているのです。
■ 不安を原動力にしない

大切なのは、「漠然とした不安」にお金を払わないという姿勢です。
保険も投資も、「構造を理解し、自分の価値観で選ぶ」ことが重要です。
市場が下がったときに“守り”を求める気持ちは分かりますが、それこそが売り手にとって最高のタイミングであることも知っておいてください。
■ おわりに
「誰の意見を信じるか」で人生は大きく変わります。
私は答えを押しつけたいのではありません。
ただ、仕組みや構造を知ることで、自分で判断できる力を育ててほしいと願っています。
不安に振り回されず、冷静に、主体的に資産と向き合う人が一人でも増えることを願って。
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