【医学部を目指す人へ】 なぜ“直美”が増えるのか? 美容医療ブームと医師としてのキャリアの選び方

マインドフルネス

臨床現場で15年を過ごしてきたアラフォー医師です。
近年、美容医療の話題が急増しています。
コロナ禍以降、美容外科医・美容皮膚科医の数は約3倍に増加したという話も耳にします。

その背景には何があるのでしょうか。
また、医学部を目指す人、あるいは今まさに診療科選びをしている学生にとって、何を考えるべきなのでしょうか。

今回は少し辛口に、この現象を医師としての立場から考察してみたいと思います。


医学生はどのように診療科を選ぶのか?

医学部の学生と話すとき、「何科を志望していますか?」という質問をよくします。
すると大体、次のようなパターンに分かれます:

  • ① 実習などを通して「面白い・合っている」と感じた科を選ぶ(直感型)
  • ② 親がその診療科で開業しているため、自然とその道に進む(家業型)
  • ③ 奨学金などの制約で診療科が決まっている(制度型)

個人的には、①+③のように「やりたいこと」と「経済的な現実」が一致している学生に出会うと、とても安心します。

②に関しても、本人の志と一致していれば、地域医療の継承という意味でも意義あることだと感じています。


美容医療に進む医師が増えている理由

では、なぜ近年、美容医療を選ぶ若手医師が増えているのでしょうか?

もちろん、「美を追求したい」「人を綺麗にしてあげたい」という純粋な動機もあると思います。
しかし一方で、現場では次のような“消去法”の選択も感じます:

「A:しんどくて給与も低い診療科」 vs 「B:比較的楽で高収入な美容医療」
→ Bを選ぶ

これが、特に明確な志望がない医師たちの間で、美容医療に人が集まる理由の一つです。

社会の価値観が「効率・見た目・収入」へとシフトしている中、医師の選択にもその影響は色濃く表れています。


「直美(チョクビ)」とは何か?

美容医療の世界では、研修を終えてすぐに美容クリニックに入る医師を「直美(チョクビ)」と呼びます。

彼らは研修医の間に美容を学ぶ時間もなく、手術の経験も乏しいことが多いです。
それでも、美容クリニックではすぐに「院長」としてデビューしていたりします。

経歴を見ると「有名大学病院出身」と書いてあることもありますが、実態は短期間在籍しただけ、という例も少なくありません。
「経歴詐称では?」と疑いたくなるようなプロフィールもあります。


美容医療は2つに分かれる

美容医療には、次の2つの側面があります:

  1. 美しさを真摯に追求する医療(人間の本質的な欲求に応えるもの)
  2. その欲求を利用してお金を稼ぐだけの医療(拝金主義的なもの)

消費者としては、もちろん前者を選びたい。
しかし現場の感覚では、後者の方が圧倒的に多い印象です。


医学生・若手医師へのメッセージ

診療科選びの軸は、人によって違って当然です。
でも、「誰のために医者になるのか」「何を大切にしたいのか」は、よく考えてほしい。

人のために動くとき、エネルギーは不思議と湧いてくるものです。
逆に、自分のためだけに努力を続けるのは、案外しんどい。

美容医療を選ぶこと自体が悪いとは思いません。
しかし、その選択に自分なりの理由と責任を持てるかどうかが大切です。


最後に:幸せの本質とは

医師であろうと、消費者であろうと――
美にしても、お金にしても、「もっと欲しい」「人と比べて足りない」と思い始めるとキリがありません。

「吾唯足知(われただたるをしる)」
自分にとって本当に大切なもの、すでに手にしている幸せに気づける感性を持っていてほしい。

私自身、美容医療に進む選択肢はあります。
でも今は、もっと分かりやすく「徳を積める道」を歩んでいきたいと考えています。

>> 併せて読みたい

  

コメント

タイトルとURLをコピーしました